今月のことば

竹の節に想う 

千 宗室

淡交タイムス 1月号 巻頭言より

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。 
 さて、茶道具の中でもとりわけ自然の姿が生かされているものの一つに竹の花入があります。形(なり)のよいものを添釜などで拝見しますと、「この竹の根は一体どれくらいの大きさだろう」「もし伸びていたなら、どれほどの太さになっただろう」などとつい想像を膨らませてしまうものです。 
 藪や林の中の竹を見ますと、下にいくほど節の間隔が密になり、根っこに近いところでは押しつぶされそうなほど節々が積み重なっています。もちろんその間隔は最初から狭かったわけではありません。長い年月をかけて成長するにつれ、古い節の上に新しい節がだんだんと乗っていく。古い節が肩車をしてくれているようなものでしょう。それ故、下から上に眺めていけば、その姿の全体を見てとることができます。 
 皆さんが所属しておられる支部や青年部にもそれぞれに長い歴史があります。元をたどれば、最初から何もかも順風満帆ではなかったはずです。多くの先輩方がさまざまな苦難や試練を乗り越えてこられたからこそ今日まで続いており、たくさんの節目が積み重なった上に私たちがいるわけです。 
 辛いときこそ根元に目を向けてみてはいかがでしょう。長く続いてきているものを知り、学ぶことが「稽古」です。それによって「今」が見えてきます。皆さん方には「稽古照今」の気持ちをもって新しい年に臨んでいただきたいと存じます。 

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