今月のことば

心の幹

千 宗室

淡交タイムス9月号 巻頭言より

 私は今でもよくストレッチやウエイトトレーニングをしています。筋力を維持するためだけではなく体幹を整えるためです。ことさら自分の構えや体幹を気にするようになったのは、子どもの頃に授かった祖母の厳しい教えのせいでしょう。
 体のストレッチも大事ですが、皆さんは頭のストレッチをなさっていますか。いわゆるイメージトレーニングです。稽古場に入る前に、一つの点前を頭の中で組み立てるというのはとてもいい勉強になります。私は以前から献茶などに臨む際、必ずイメージトレーニングをしておりました。また、例えば夏期講習会の時は、小習事や四ヶ伝など翌日に指導する点前を頭の中でシミュレーションします。
 着物を脱いで、つまり帯を締めない状態で畳に座って構えを正す。部屋着でもなんでもいい。姿勢が崩れやすいようなラフな格好のほうがかえって体幹を意識できます。そのとき私は半眼になります。目をつむるのではなく、坐禅の時の目です。そうして目の前に台子や道具が置いてあるのを想像し、頭の中で点前の手順をずっと追いかけていく。ここから始めるなら、教える立場の人にとっても、先生の前で明日点前をしなければならないという人にとっても、良いウォーミングアップになるはずです。
 最近では禅の世界でも「椅子坐禅」というものがあるそうです。要するに、どんな場所でも自分の気持ち次第で身一つに戻っていける。即ち、知らないうちに背負っている余計なものを削り落としていくことができるということです。
 皆さんも日頃からいろいろなことを想定しながら、頭のストレッチを試してみてください。自分の中にある要らないものをたくさん見つけられるでしょう。もし、要らないものを拾ったら、気付いたときにまた捨てればいい。それを繰り返しているうちに心の幹も整っていくと思います。

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