レッスン風景

ホテルオークラ京都教室


レッスン風景6

 とうとうすべてのお稽古を終えました。実は、運よく皆勤で通っていた私ですが、最終回だけ欠席せざるを得なくなってしまいました。共に学んだ人たちと修了の喜びを分かち合えず、先生方へのお礼も言えず、「終わり」がない中途半端な幕切れ。しかし冷静に考えてみれば、「終わり」がないこと、それは、「まだ続いている」ということ、つまり「このまま続けていきなさい」という意味かも・・・と思えば、嘆きが希望に変わりつつあります。
そんなわけで記念すべき最終回のモニターは書けませんが、ここで「初心者のための茶道教室」に来たことがない人に向けて、私なりの感想を具体的に書かせていただきます。

 まずは、この教室で得たこと。日常のお辞儀など、何気ない立ち居振る舞いにも自信が生まれ、自然にできるようになりました。そして、自然、文化、歴史に目が向き、楽しいことや話題が増えました。またお教室の雰囲気に馴染めるか?という心配は杞憂でした。年齢は様々でしたが、最初から「相客に心せよ」と、お互いの思いやりを諭していただいたおかげで、心地よく和やかでした。もちろん趣向を凝らして厳選されたお菓子は毎回の楽しみで、都のお菓子だけではなく、たまに地方の素朴なお菓子が出される意外性にも心惹かれました。それに足がしびれても、いつも先生が無理をしないようにとご配慮くださったことも大事な安心要素でした。さらに「花は野にあるように」のごとく、脇役として存在感を放つ可憐な茶花の味わいも…。まだまだありますが、このあたりにしておきます。

 例えてみれば、水を怖がっていた子どもが、浅瀬でスイスイ楽しく泳げるようになった感じでしょうか。人それぞれとは思いますが、私にとってはそんなお教室でした。

 最後に一つ。事務局より「たとえ細くとも長く繋がっていくことが何よりも有り難いと存じております」とのお言葉をいただき、「そうだ、焦らず無理せず、楽しみながら、長く続けていこう」と、素直に心に落ちました。モニターをさせていただいたことも学びです。ありがとうございました。そして今後とも末永くお願いいたします。


レッスン風景5

 8月に入りました。目新しい棚点前なども体験しながら、基本の薄茶点前の繰り返しが続きます。「毎回が初体験」という混乱の時は過ぎ、たどたどしくも手が動くようになってきました。これこそ念入りな割り稽古のおかげなのだと実感します。
 そんな時「稽古とは一より習ひ十を知り 十よりかへるもとのその一」という、利休百首のうちの一首を教えていただきました。一から十へ到達すればよいのではなく、再び一にかえって繰り返すことが大切、という意味。さすが、先生のお言葉は時宜に適っています。
 ちょっぴり楽しい宿題が出ました。「茶杓の銘を3つ考えてくること」です。生活の中で、盛夏に隠れる涼を探しました。早朝のヒグラシの声や、稲葉の朝露、薄暗い道に舞うハグロトンボ…。ところががんばって考えても、1週2週と過ぎるうち、すぐ鮮度が落ちてしまいます。そんな「がっかり感」も、少しずつ季節のうつろいが見えるようになってきた証拠かもしれません。そう思えば、うれしい変化です。

 変化といえば、お茶室に入ったときに開いていた「芙蓉の花」が、終わる頃に閉じかけているのを見てはっとしました。一日花のはかなさで知らされる豊かな時間。暑い中、お花を用意してくださるお心づくしに感謝しました。
 共に練習を重ねるお仲間同士も和やかに打ち解け、徐々に名残惜しい雰囲気になっています。残すところあと2回。和敬清寂の時を満喫いたします。


レッスン風景4

 7月。3年ぶりに執り行われる祇園祭の山鉾巡行などの神事で、京都の街中は久々の活気を感じます。今月はそんな京都らしい華やぎや、夏のおもてなしの心を取り入れたしつらえで楽しませていただきました。

 函谷鉾のお軸や、祇園祭のお花である檜扇(ひおうぎ)、見目涼やかな籠の花入れ。そしてやっぱり印象深いのはお菓子です。姿や味だけでなく、その歴史や名前にもそれぞれの物語があり、京菓子の奥深さを感じる選りすぐりばかり。お稽古日に間に合うようにご準備いただくご苦労を思うと、ただ感謝です。

 さて肝心のお稽古は、薄茶点前の単純な繰り返し..ではありません。少しずつ手が動くようになるにつれて、さらに一つ一つの所作を切り取り、掘り下げての手ほどきへと続きます。すると不思議なことに、見えるものが増えていくような気がします。
 また、「なぜこんなことを」という疑問に、ずばり合理的なお答えが返ることもあれば、ただ「こうしたら楽しいからですよ」とおっしゃることも。そのどれも素直に受け入れられる自分に驚かされます。歴史ある茶の湯の世界に包まれて、心の平安を得ているのでしょうか。

 棚を用いた点前を教えていただいた7月最終週は、最後に先生が洗い茶巾のお点前を見せてくださいました。金属の建水に滴る水の音に涼を感じるおもてなしの技..。流れるような所作は、お手本というよりは眼福となりました。
 あと2か月を切りましたが「行雲流水」のごとく心をゆだねて、この恵まれた時間を楽しませていただきます。


レッスン風景3

 全20回のお教室が折り返しとなり、ほぼ毎週のお稽古リズムが馴染んできたこの頃。毎回新しいことの連続で飽和状態だった頃は急な階段を登るような心地でしたが...今は少し緩やかな坂道に差し掛かり、ほんのちょっぴり視野が広がった気がしています。

 窓から見える風景は、6月だというのに真夏。お軸の書が「青雲新(せいうんあらた)」と読むと教えていただき、まさに「梅雨明け!」の爽快感を感じました。そして厳選してくださる涼やかさを演出するお菓子には毎回うっとり。特に、葛で作られた透明感のあるやわらかな水無月は初めてで、上品な見た目と味にため息がでました。

 お教室に通いはじめてから、普段の生活の中にも少しだけ変化を感じます。今まで見過ごしていたもの(例えばお花とか、季節のうつろいとか、書や絵など)が目に入り、想像し、楽しめるようになった気がします。「ような気がする」程度ですけれど、うれしい成長です。

 成長と言えば、久しぶりに先生が受講者のみんなにお茶を点ててくださったことがありました。とてもまろやかでふくふくと美味しくて「さすが!」と感動しつつ、それを味わえる自分の舌も成長しているかも...と、うれしくなりました。


レッスン風景2

 5月のお稽古の次のステップは「盆略点前」。歴史ある茶の湯の世界にあっては、まだ100年くらいの比較的新しいお点前で、お教室によっては教えないこともあるとのこと。けれども宮村先生は、「この中に基本がつまっています。だから私は大切にしています。ここでしっかりと所作を身につけておくことが、先々役に立ちますから。」と力を込めておっしゃいました。
 また、「茶巾の所作など水屋でやることも、正しくできるようになってください」とも。それらのお言葉が素直に心へ届きました。

 お稽古の中で「どうしてわざわざ、こんなややこしいことを?」と思ってしまう所作も、意味を知ったことで、スイっと馴染む時があります。例えば帛紗捌き。なぜ下に広げて畳むことをしないのか?それは、空中で行うことが清めになるから。だから上からつまむようなしぐさはせず、手の位置や向き、高さにも気を付けることが大切とのこと。目の前で流れる所作と共にご説明していただき、深く納得できたのでした。

 さて、毎回楽しみな床の間のしつらえで、特に印象的だったのは芍薬の花の蕾です。開花してしまうと華やかすぎて、香りも増して存在感が強すぎるけれど、蕾ならひかえめで、お茶の香りを邪魔することなく清楚に茶室を飾ってくれるのだと。そして「お花に限らず、そういうひっそりした心遣いがどこにあるのかを探すことも、また茶道の楽しみなのですよ」とのこと。今まで見えなかったことが見えてきそうなちょっとうれしい予感です。

 窓から見える横顔の大文字山につらなる東山。日に日に新緑が眩しく萌えてゆきます。空には上昇気流に乗って、トンビが豪快に舞っています。季節の移ろいを感じながらの恵まれたお稽古。まだまだ途中でしびれた足を伸ばしつつですが…背筋を伸ばして励んでいます。


レッスン風景1

 6階の見晴らしのよい明るいお茶室。窓からそよぐ春風も、私たちの緊張を解くことはできません。けれど、笑みを絶やさぬ宮村先生の力強いお声に少しずつほぐされて、自己紹介、道具説明、お辞儀の仕方、立ち方、座り方、そして床の間拝見のご指導まで、無我夢中についていきました。
 「半年間は意外にすぐです。基本をしっかり押さえながら進めます」とのことで、まずは「お辞儀」の練習。手よりも腰を先に折る、腕に丸太を抱えているように…など、ポイントをイメージしながらやってみると、不思議!別人になったように、カッコイイ「茶道のお辞儀」が完成していたのです。これぞ茶道教室と実感した瞬間でした。

 そして最後にお待ちかねのお点前。美しいお菓子を前に「何のお花だと思いますか?」と問われて固まる私たち。「若牡丹です、分からなくても、考えたり想像してみてこそ、深く心に残るものですよ」とのお言葉は、きっとこれから始まる学びのヒントだと思いました。先生たちが点ててくださったクリーミーでまろやかなお茶は、ほどよく疲れた心身に染み入るように甘く感じられました。

 2回目のお稽古は雲の垂れこめる空模様、少々蒸し暑い日となりました。来た順に床を拝見するところから始まり「考えたり想像してみることが大切」との教えを心に留めてお軸を見上げました。なにやら、今日はたくさんの文字が…。とにかく考えて見たからこそ「これは、利休七則といって…」という茶道の心得の意味がよく頭に入りました。
 先週の復習に続いて、初めての帛紗さばきです。「人には見えないところでも、基本をしっかり身に付けてください」という先生の力のこもったご指導で、たたみ方、懐中の仕方、腰へのつけかたなどを繰り返し練習。分かりやすく丁寧なお導きで棗と茶杓を清める動作まですいすいと進み、ちょっぴり茶道っぽくなってきた我が振る舞いに少し感動しました

 さいごに初めてお茶を点てさせていただき、まだ体験の域でありつつも、いよいよ入口に座り、指先を前について茶道の世界をのぞき見ているような気がしています。


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