レッスン風景

ホテルオークラ福岡教室


レッスン風景2

5/23  本来無一物

 出張が重なり3週間ぶりのお稽古。ホテルのエスカレーターで2階に昇りながら呼吸を整えます。お部屋に入ると「久しぶりだね〜!」と仲間のいつもの笑顔。みんなに「お仕事だったの〜?」と、声をかけていただきながら、久しぶりのお茶のお稽古への緊張も解きほぐされていきました。4月は盆略点前のお稽古でしたが、5月になり風炉を使用するお点前の練習がはじまりました。

 お軸は「本来無一物」。先生から「今日から風炉を使ったお稽古になります。これまで学んだ盆略点前とは違ったものになるので、また少しずつやっていきましょうね」と優しいお言葉をいただきました。帛紗を捌き、棗を清めて…茶杓を…と、思い出しながらイメージしてみたりしていたのですが、まだまだ身に染み込まないまま、新しい世界に飛び込んでいくわけです。一瞬心の中で「まだ出来てないのに、大丈夫だろうか?」と、不安な気持ちが浮かんできます。ですが、このお軸を見た瞬間、「あれ?きっと本質的には、まだ何も起きておらず、この心の杞憂でさえ不必要なものなのではないだろうか?」と思いました。

 お稽古がはじまりました。風炉の前で柄杓を使ってお点前をします。はじめての「柄杓」を使ったお点前は頭と身体が追いつかず、先生の言葉に丁寧にいざなわれながら、ひとつひとつの動きを心に留めていきました。柄杓の角度ひとつを取っても、その角度で決めていかなければ、次の所作に繋がらないものになります。しかるべき場所に、おさまる角度にて、柄杓の音を少し響かせながら、置く。ちょっと手を伸ばし、無理な姿勢に見えても、次の瞬間、その姿勢の意味するところがある。ひとつの動きにこれだけの意味と役割。「ただ置く」のではなく、心を込めて「置く」という動作。これが美しく、無意識にできるようになることは永遠の課題となってしまいそうですが、今は身体にしっかり浸透していくことを楽しんでいます。

 お馴染みの帛紗捌きは、少しずつスムーズに。練習を重ねて折り目がついてきて、同時に自分の癖も見えてきます。自分ひとりでやっていると肘も下がりがちですが、横から見るとその高さが、また美しさを際立たせるのだと知りました。お客様に見られているという意識、それも含めてお茶の時間を提供していることを大切にしていきたいと感じました。

 今日のお菓子は「わらび餅」。丁寧に作られたお菓子を口に頬張りながら、お点前の所作を見て学ぶことばかり。今はこうしてゆっくり食べているけれど、もっとスムーズにお点前ができるようになると、お菓子を食べる時間はどうなっていくのかしら?と思いながら、今日も美味しくいただきました。

 最後に教室で唯一の男性メンバーのお点前をみんなで見る機会をいただきました。男性の背筋がぴしゃっと伸びて、柄杓に手が伸びる姿というのは本当に惚れ惚れするほど美しく。柄杓にかかる指先までも芯を感じさせられます。大切なポイントでは先生がゆっくり解説をしてくださいます。手を伸ばし、茶碗がそこにあるかのように、何も道具は持っていなくても、そこに物があるような重さを感じる手の動き。先生の指先は時にリズミカルに、緩急があり、優しい言葉の中にまた芯があり、いつまでも見ていたくなります。


レッスン風景1

4/18 開講

 「いつかはお茶を習ってみたい!」「大切な人が来た時に、おもてなしができるようになりたい!」そう思い続けて、気づけば30代になっていました。
 開講式には、博多を代表する先生方がお集まりくださり、これからはじまるお茶の世界に優しく迎え入れてくださいました。おそらくその挨拶の時間のためだけに、お着物を着られ準備をして来てくださったと思うと、有難い気持ちでいっぱいになりました。

 初日は「真・行・草」の挨拶から。お稽古のはじまりにはみなで挨拶を行いました。真のお辞儀は手の平をすべて畳につけ、上体を深くかがめることになります。日頃、道ゆく人と会釈をするような挨拶ではなく、そこに「心をきちんと留める」そんな気持ちになりました。
 そこからは襖の開け閉め、茶室での移動の仕方を勉強しました。相手に知らせるために、あえて「音」を立てるのは、そこにも相手を思う思いやりがあるからなのだと知りました。「音」を立てない思いやり。「音」を立てる思いやり。思いやりも様々なカタチがあるんですね…

 はじめてのお茶の時間は、お菓子と薄茶をいただきました。懐紙の上に、大切に乗せたお菓子は、見ためにも楽しく可愛らしく、また、中はうぐいすいろの餡が入っていて、春を感じるお菓子でした。手の上で転がしそうになりながら、「これをどう美しく、美味しく食べられるのか?」「まだまだ道は長いなぁ…」と感じるばかり。
 お菓子の甘さが口の中に残りながらいただく、はじめてのお茶は苦さよりも甘さがたっぷりでした。先生の点ててくださったお茶は、口に入れるととても滑らかで、「美味しい!」としか言えなかったのですが、これからこの味の奥深さを学んでいけるのだと思うと何倍にも味が美味しくなるのでした。

 Cコースは全員で8名。年齢も置かれた環境も様々、はじめてお逢いした皆様と、これからの半年を一緒に歩んでいくことになりました。
 皆でひとつひとつの所作を学びながら、軸や季節のお花、器、その世界、お互いのお茶を味わいながら精進して参りたいと思います。

4/25 山花開似錦

 2回目のお教室は少し遅れての参加。着いた時には皆様、帛紗さばきの練習をされていました。
 1回目に習ったばかりの茶室への入り方も、ひとりで入ると覚えていないことを思い知らされます。「あ!お軸、ちゃんと見てなかった」「どうやってあの場所まで歩いて座るのかな?」ひとつひとつの動作の意味を拾いながら自分の席に座りました。

 「山花開いて錦に似たり」この軸がかけられていました。このあとには「澗水湛えて藍の如し」という言葉が続くそうです。軸の禅語は様々な解釈があると思いますが、先生がお教室の度に「今日はこれにしよう!」と決められている、その心をもっと学んでいけたらと感じました。
 「山に咲いているたくさんの花は錦のように美しく、谷川に流れる水もまるで藍のようです」言葉にするとそのままですが、この言葉が生まれた背景を読み解くと、「目の前にある変化を受け入れながら、楽しみながら、前に進んでいきなさい」とも、教えられているような気持ちになりました。

 先生の後ろ姿を見ながら、帛紗さばきを真似てみますが、ひとつ指に集中すると、肘が上がっておらず、肘を意識すると帛紗がばらばらに…。うーん。難しい…。「はじめですからね、何度でもやりましょう」と、ひとりひとりの疑問や躓きを解消しながら、お稽古が進んでいきます。
 時に笑いながら取り組む時間。お茶の世界がこうして優しく開かれるものになっているのは本当に有難いことだと感じます。

 お茶を点てる際に使用する茶筅の素材は竹で作られているそうです。ひとつの竹を割いて、この細い一本一本は手作りとのこと。お茶を点てたあとに、この茶筅の先についた抹茶の状態を見て、「皆様の茶筅の先を拝見するところ、大丈夫そうですよ!」と、先生が仕上がりを見てくださいます。

 今日のお菓子は「茶巾しぼり」。季節のお花である「あやめ」をあしらったもの。こんな美しい食べ物があるなんて日本って本当に素晴らしいですね…。家にいながら、目の前にその花がなくとも、味わいながら、季節を楽しめる。そんなことを思いながら、お茶を点てていただいている間に、無事に食べ終えられるかドキドキしながらいただきました。

 2回目のお稽古では、帛紗を用いて、棗を清めたり、茶杓を清め、茶碗を清めることを学びました。今はひとつひとつの所作を追いかけることで精一杯ですが、来ていただいた方の目の前でひとつひとつ心を寄せてお茶を点てられるようになりたいな…と思いました。


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