東北大学学友会茶道部の活動


  東北大学学友会茶道部は昭和24年に発足し、今年63年目を迎えます。杜の都仙台で、日々茶道に向き合う学友会茶道部にお話を伺いました。

東北ブロック40周年記念大会 立礼席
茶道部部長 海老名顕仁
  茶道を始めてまだ4年しか経っていないのですが、その中でも一番良かったと思えることは、季節の美しさがわかるようになってきたことです。
  昨年、東日本大震災の被災地3か所に青年部の皆さまと合同で呈茶に伺いました。4月末に伺った際のことなのですが、仮設住宅の側に綺麗に咲いた一本の桜の木がありました。それを見た被災地の方は、「こんなに大きな被害を受けたのに、桜の木はしっかりと咲いてくれてありがたい」と両手を合わせて拝んでおられました。その姿を見て共感する自分に気づいたとき、日本人が持ち続けてきた自然を愛でる心が、自分の中にも茶道を通して身についていることを実感しました。茶道を続けていなかったならば、春には花、夏には少しの涼しさ、秋には月、冬には雪が自分の周りにあっても当たり前にしか感じず、本当の意味での季節の大切さ、美しさは分からなかったかもしれません。
  今、茶道部で茶道を続けていられることも63年間守っていただいた先輩、指導の先生方あってのことだと実感します。茶道を通じて、そうした感謝の気持ちをもてることもありがたいことだと感じています。卒業した後も、ぜひ青年部、社中として茶道を続けていきたいと考えています。

指導者・岡崎先生の稽古場にて
指導者 岡崎宗澄、岡崎宗豊
  東北大学学友会茶道部は戦後間もない昭和24年に発足しました。初めは医学部生を中心に40名程度で活動していましたが、一時は部員が少なく存続が危ぶまれる時期もありました。近年は茶道を学びたいという生徒が増え、留学生も入部し国際色豊かになりました。
  学生にはこんな事を申します。「茶道は頭だけを使って学ぶのではなく、自分の体でぶつかっていき自分で体験して初めて身につくもの。実践が大切です」 そうして1年間は基本の点前を繰り返し、2年生からは小習事に入り、卒業時には花月之式も習得し茶事も体験します。
  日頃の稽古では、掛軸や花、また菓子などから季節の移り変わりを感じてもらえるよう心配りをしていきます。そして点前だけでなく、人間として成長していく上で大切な心について、掛軸などから話をするようにしております。
  最近、卒業後も社中に入り青年部にも入会して茶道を更に学んでみたいという学生が増え、うれしく思っております。平成20年には宮城学生茶道連盟が発足し、他大学との交流や支部・青年部の行事にも積極的に参加し、その中心的な存在として活躍しています。
  日本の代表的な伝統文化であり生活文化である茶道の素晴らしさを、次世代を担う学生に今後更に伝えていきたいと思っております。

東北ブロック記念大会にて 伊住公一朗様を囲んで
部員の皆さんの声
  私が茶道で一番楽しく感じるのは灰型つくりです。狭い風炉の中に二文字や遠山、名残りの時季には向山といった景色をつくることで、小さい中にもお客さまを精一杯おもてなしている感じが大変好ましく思います。また、自分が客の立場になった際にも相手の心遣いを感じられるよう、自分の心も注意深く働かせることも茶道の中で勉強させていただきました。
  灰型に興味をもったきっかけは山藤宗山先生の本でした。風炉灰についての本だったのですが、ちょうどその本を読んでいる時に、当時4年生の先輩が最後の灰型として遠山を切っているのを横で見ていて、本当に感じ入るところがあったのがきっかけです。以来、折々の行事の際などには積極的に灰型をつくらせていただいています。
  私は大学から茶道を始めて今年で4年目になります。最初は覚えた点前が増えることが、とても楽しく、嬉しかったのですが、最近になって思うのは茶道の時間を通して、年齢や性別を超えて親しくなれることです。茶道をやっていて良かったと思える瞬間は本当にたくさんあって、こうした機会を与えてくれた先生、先輩方に感謝の気持ちでいっぱいです。
  今年から2年生になって後輩を指導する立場になりました。1年生の頃は自分のことだけを考えて茶道を習っていたのですが、後輩に教えることを通じてまた1つ茶道の魅力が分かってきたように思います。今の私がいるもの63年間、先輩方から受け継がれてきたものがあるからであり、そうした歴史を伝えていくことも大切なことだと思います。



  東北大学学友会茶道部では窯元見学、お菓子作りなど様々な行事を学生自身が積極的に企画し、実行しています。現在、8大学9茶道部の加盟する宮城学生茶道連盟でも積極的に活動しており、先般は点前発表会を実施しています。
  点前発表会も学生間の意見交換の中で出てきた試みです。大学の環境によっては炭が使えないため炭手前をしたことがなかったり、部活動の時間の関係で運び点前で4年間が終わってしまうことがあるため、各大学それぞれの環境を生かした点前を互いに披露し、茶道の学びを深め合うことを目的とした行事です。
  学生らしい自由な発想で闊達に活動する東北の大学茶道部の中にあって、学友会茶道部も宮城の茶文化を受け継ぎ、日々、道・学・実の修錬に励んでいます。