千 玄室大宗匠、キューバを訪問
〜日本・キューバ外交関係樹立80周年記念して茶道行事を開催〜




  千 玄室大宗匠は、11月19日から26日までキューバ共和国を訪問されました。この度の訪問は、本年が日本・キューバ外交関係樹立80周年にあたることから、日本国外務省が裏千家に茶道を通じての文化交流行事の実施を要請、大宗匠がこれに応えて実現したものです。




○茶会(於 日本大使公邸)
  11月21日、ハバナ市内の各国大使公邸が連なる一角にある瀟洒な日本大使公邸において茶会が催され、ブルノ・ロドリゲス外務大臣はじめ各省庁庁局長など60名が出席。ゲストのなかにはフィデル・カストロ前国家評議会議長の長男のフィデル・カストロ・ディアス評議会科学担当顧問、ラウル・カストロ国家評議会議長の次女のマリエラ・カストロ性科学研究所所長らカストロ・ファミリーの姿もありました。
  茶会では、はじめに西林万寿夫駐キューバ共和国日本国特命全権大使が挨拶され、大宗匠を紹介。大宗匠は点てられた一碗をロドリゲス外務大臣に呈されました。大宗匠が「お茶は初めてですか」と尋ねられると、大臣は「以前訪日した時に一度いただいたことがあります。その時のことは良き思い出として強く印象に残っています」と答えられ、大宗匠のキューバ訪問に歓迎の意を示されました。
  呈茶の後には、大臣自ら茶筅を振って点てられたお茶を大宗匠が召し上がる一場面もあり、会場内は和気藹々とした雰囲気に包まれました。
  茶会終了後には昼食会が催され、招待客方は各テーブルで茶道を話題にゆっくりと語り合われました。


フィデル・カストロ・ディアス国家評議会科学担当顧問(前列右側)



茶筅を振られるロドリゲス外務大臣


○平和祈念献茶式(於 聖カルメン教会)
  翌22日、大宗匠は、ハバナ市の中心地にある聖カルメン教会において平和祈念献茶式を厳修されました。
  午前8時半からミゲル司祭によって執り行われたミサには、早朝にもかかわらず一般市民、信者ら約200名が参列。約1時間のミサの終了後、司祭が大宗匠を紹介され、献茶式の開始となりました。献茶式には川真田一穂公使、淡交会メキシコ協会 ロベルト・ベハール会長、今回の一連の行事に同行された元関西駐在大使の天江喜七郎国立京都国際会館館長(淡交会顧問)夫妻をはじめ来賓方も参列され、 荘厳な雰囲気のなか大宗匠が一碗を謹点、世界平和を祈念して合掌されました。




聖カルメン教会


○講演会(於 イスパノ・アメリカ文化センター)
  同日午後、大宗匠はカリブ海海岸に面したイスパノ・アメリカ文化センターでの講演会に臨まれました。
  午後2時の開場と同時に多数の入場者が会場内の呈茶席に長い列を作り、茶道に対する関心の高さが窺われました。呈茶席では、裏千家メキシコ出張所の日暮宗豊駐在講師及びメキシコ協会 ベハール会長ら4名のメキシコ人社中が中心となって来場者に一碗を振るまいました。
  講演会開催に際して、日本大使館が日本語や文化を学ぶ学生、研究者、日系人を中心に広報を行っており、午後3時の講演時には会場内は立錐の余地も無いほどの盛況ぶり。講演会では、冒頭、西林大使が挨拶に続いて大宗匠を紹介。大宗匠は、会場を埋め尽くした400名の聴衆を前に、茶道の心、平和の精神をやさしく丁寧に説かれました。
  「畳に座ってみたい人はいませんか」という大宗匠の呼びかけには多数の希望者があり、グループに分かれて畳に座っての呈茶を体験しました。身じろぎもせずに正座をして目を輝かせながら一碗を喫する姿に、大宗匠も遠路キューバまで赴かれた意義を実感されたようでした。
  講演・茶道デモンストレーションの終了後にも呈茶席が設けられ、来場者一人ひとりに一碗が呈されました。



西林万寿夫大使の挨拶




畳に座って呈茶を受ける聴衆


淡交会メキシコ協会会員による呈茶席


  帰国前の夕刻には、大宗匠が滞在するホテルにフィデル・カストロ前革命評議会議長の四男でキューバ野球連盟副会長のアントニオ・カストロ氏が来訪。大宗匠のキューバ訪問に対する前議長からの謝意を伝えられるとともに、数日前に撮影したばかりという前議長の直筆署名・メッセージ入りの肖像写真を大宗匠に手渡されました。前議長のメッセージには「千 玄室様 真心を込めた友情を持って フィデル・カストロ」とありました。