千 玄室大宗匠、ハンガリーを訪問
中欧に日本文化と平和の一碗を広めて




  千 玄室大宗匠は、6月11〜15日、ハンガリー共和国を訪問、首都ブダペストにおいて、平和祈念献茶式を行われたほか、大統領、国会議長と会見されるなど、精力的に茶道外交を展開されました。
  今回の訪問は、昨年9月マードル・ハンガリー共和国大統領が訪日された際、ダルマ大統領夫人が裏千家東京道場にて一碗を喫され、次回は是非ハンガリーで大統領と共に頂きたいと、大統領夫妻が大宗匠招聘の希望を稲川駐ハンガリー日本国大使に伝えられたことから実現したもの。折しも今年は「日本・EU市民交流年」にあたり、昨年5月にEU加盟を果たしたハンガリーでは、大宗匠が訪問された先々で、日本の伝統文化である茶道に対する強い関心と歓迎ムードにあふれていました。





  11日午後には市南部のドナウ川沿いに建つエトヴェシュ・ローランド大学(ELTE)において茶道紹介が行われました。大宗匠の講演が予定されていましたが、大宗匠の搭乗予定便が故障となり日本出発を延期されたため、先着の後藤宗国業躰が点前解説を行い、ハンガリー協会会員や日本からの随団による呈茶がなされました。学生や一般市民約350人が聴講し、熱心な質問も相次ぎ、最後には大きな拍手が贈られるなど、大好評の内に終了しました。


茶道デモンストレーション 呈茶は日本・ヨーロッパの会員合同で


エトヴェシュ・ローランド大学 ハンガリー協会会員





  12日午前9時、ペスト地区にある英雄広場において平和祈念献茶式を厳修。守護天使ガブリエルを頂く巨大な柱がその中心をなし、歴代君主らの銅像が囲む無名戦士記念碑の前に点前座が設えられました。献茶式には稲川照芳駐ハンガリー日本国大使夫妻、元駐日ハンガリー大使で淡交会ハンガリー協会会長のシュディ・ゾルターン氏、今回の一連の行事に同行の元駐スイス日本国大使の加藤千幸今日庵顧問らが列席。
  儀仗兵の先導で進まれた大宗匠は記念碑に献花された後、一碗を謹点。世界平和を祈念して合掌されました。









  13日午後には国会議事堂で茶道紹介が行われました。「ゴブランの間」に設えられた茶席には、スィリ・カタリン国民議会議長はじめ各党党首、国会議員らが列席。大宗匠はスィリ議長に一碗を呈され、茶道の「和敬清寂」の心を説かれました。会場には現地のマスコミも多数詰めかけ、茶道が様々なメディアを通じて市民に紹介されました。


ゴブラン織りが美しい「ゴブランの間」で、スィリ国民議会議長への呈茶



ハンガリー国会議事堂


  さらに、大宗匠はブダ地区・王宮の丘にある大統領官邸を表敬。マードル・フェレンツ大統領夫妻に一碗を献じられました。大宗匠のこの度の訪問を楽しみにされていたという大統領夫妻は、大宗匠の点前を見つめ、一碗の醸し出す世界を堪能された様子でした。大宗匠の点じられた一碗を服された大統領夫妻は、茶道の深い精神性に感銘を受け、また大いに関心を持たれ、次々と質問されました。その内容は茶葉や水、日本における喫茶の風習についてなど多岐にわたるものでした。その後、大統領自らも茶筅を振られるなど、会見は和やかに進められました。最後に大宗匠が大統領夫妻と再会を願って固い握手を交わされ、成功裏に終了いたしました。


マードル・フェレンツ大統領夫妻に
一碗を献じられる大宗匠
大統領官邸