千 玄室大宗匠、鈴木大拙館開館記念講演




  10月17日(月)金沢歌劇座ホールにおいて、鈴木大拙館開館記念講演会が開催され、千 玄室大宗匠が「大拙と茶の湯‐鈴木大拙を偲んで‐」と題して講演されました。
  1951年、大宗匠は一碗のお茶とともにアメリカに渡り鈴木大拙博士(1870-1966)と出会われました。当時すでに禅学の第一人者であった大拙博士は、まだ20代の若き宗匠が戦後間もない時期に敗戦国日本の文化を戦勝国に広めようという熱意に打たれ、大宗匠の茶道実演に際して「禅と茶」と題して米国民に向けて講演されました。以来、お二人の交流は多年にわたり、強い信頼関係で結ばれた友人としてそれぞれの世界で活躍されてきました。
  この度の講演は、鈴木大拙記念館のオープンに際して、大拙博士を深く知る大宗匠にぜひお話しいただきたいとの要望に大宗匠が応じられ実現したものです。




  大宗匠は大拙博士の淡々飄々とされた姿や、何ものをも恐れない信念、在りし日の思い出に触れつつ、「大拙先生より『茶道の美の不完全は、完全を通り越した不完全か、完全に行き着くまでの不完全か』とお尋ねがあったことがありました。未だに確たる答えは見つかっていませんが、今の見解をお持ちし、先生のお写真の前で語りあいたいと思っております」と話されました。
  会場には市民等約1000人の参加者がつどい、大宗匠の言葉に熱心に聴き入りました。




  また、講演に際して金沢21世紀美術館松涛庵に薄茶席(奈良宗久今日庵業躰担当)が設けられ、国内外からの来賓はじめ参加者に一碗が呈されました。大宗匠も講演前に足を運ばれ、爽秋の金沢の茶趣をともに楽しまれました。