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第76号(平成29年11月15日配信)

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『後継者』 伊住 公一朗
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(写真:洛趣会にて)

こんにちは!
京都はいよいよベストシーズン到来。そこかしこに観光客が増え、我々京都人はどこか肩身の狭い、しかしなぜか嬉しい。複雑な感情が入り乱れるこの季節となりました。
先月、懇意にしている老舗の金平糖屋が創業170周年のお祝い会をするという事で、伺いました。
そこは初志貫徹。金平糖しか売っていない全国でも唯一の専門店です。
ご家族で切り盛りされ、四代目は職人肌のお父さん。五代目は強豪PL学園野球部でレギュラーを張っていた、体育会気質の息子さん。
会場前でそのお二人が出席者を出迎えられていたのですが、そこに小さい人影が。
「六代目です!」
驚きました。まだ小学生の男の子が紋付き袴姿で立っていたんです。
語らずとも子は親の背中を見ているんだなと、なんだか嬉しくなりました。
彼には、真っすぐに「六代目」として伝統の技をしっかりと継承していってほしい限りです。

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茶人の逸話:井伊直弼
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  近江国(滋賀県)彦根藩第13代藩主井伊直弼(いいなおすけ)は、今年のNHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」に登場する井伊直政の子孫です。余談ですが、大河ドラマの第1作目は船橋聖一原作『花の生涯』(主演二代目尾上松緑 昭和38年)、直弼の一生を描いたものでした。
  直弼と茶の湯については、「一期一会」(いちごいちえ)という語によってよく知られていますが、これは江戸時代の茶の湯の到達点を示すものとして高く評価されています。直弼は文武両道を極め、茶の湯の他にも挿花・能楽・和歌などにも優れていました。
  政治的には大老に就任し、開国に反対する勢力を弾圧した「安政の大獄」 (あんせいのたいごく)を指揮し、「井伊の赤鬼」と恐れられ、結局「桜田門外の変」で壮絶な最期を迎えています。
  そのような直弼が残した和歌の一つに
  「そよと吹く 風に靡(なび)きて すなほ(素直)なる すがた(姿)をうつす(映す) 岸の青柳」があります。
  「和敬清寂」の内容を詠んだと言われるものですが、ある時は苛烈な政治家、ある時は教養豊かな文化人、このどちらもが直弼の姿でした。


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