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第71号(平成29年6月15日配信) |
------------------------------------------------- 『つゆ』 伊住禮次朗 ------------------------------------------------- |
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(写真:今日庵文庫 閲覧室にて) |
こんにちは、伊住禮次朗です。 ついに、梅雨入りを迎えました。「梅雨(つゆ)」は、不思議な語感をもつ言葉だと感じます。なんとなく世塵を清める雰囲気があって、突然の豪雨も仕方なしというような。これが、「ばいう前線」のせいだと思うと、いつまで居座っとんねん!という気分になります。私だけでしょうか。天気予報でみる梅雨前線の天気記号が刺々しく、なんとなく悪役の雰囲気を醸し出しているせいかもしれません。 世迷言はこの辺りにして、茶道総合資料館からのお知らせです。本年四月、今日庵文庫の閲覧室に新しい書架を増やし、複写機を新設いたしました!今後開架図書(自由閲覧可)を増やす予定ですが、既に直近の「淡交」・「なごみ」十年分及び、これまでに刊行された「淡交別冊」全冊を新たに配架しています。複写機の設置によって、ご自身で必要箇所をコピーしていただくことも可能になりました。今日庵文庫開館中は閲覧室の出入り自由ですので、ぜひご活用ください。 |
------------------------------------------------- 茶人の逸話:柳沢堯山 ------------------------------------------------- |
柳沢尭山(やなぎさわぎょうざん)は大和国(奈良県)郡山藩主で、名乗りは保光(やすみつ)など、曾祖父は、五代将軍徳川綱吉の近臣から身を起し、甲府15万石の大名となった柳沢吉保(よしやす)です。 堯山は既に連載に登場した松平不昧・酒井宗雅と茶の湯の交流を持ちましたが、その茶の湯を介しての交流は大名仲間に止まらず、奈良の松屋源三郎なども自らの茶室「無辺亭」に招き茶会を催しています。 堯山の領地大和郡山市の「柳沢文庫」には、堯山自筆の茶会記が遺されています。自会記が六会、他会記が六会収められています。その一部を紹介しますと、「二十四日にちとかけ(賭け)をしてまけて不時の茶をいたし候、池田、吉田、了廻などいふひとびとにて候」とあるように、池田をはじめとする三人と賭けをして負けたので茶会を開かざるをえなくなったと断ったうえで道具の組み合わせを書き残しています。なんとこの茶会では堯山が好んだ菓子で、銘を早蕨(さわらび)とつけたものが使われています。他にもねだられて朝茶をしたので、早起きのつけがまわり睡魔をもよおし、つい昼寝をしてしまったものなど、彼の茶会記は、大名の日常生活における茶の湯の有り様を彷彿とさせてくれます。 |