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第30号(平成26年1月15日配信)

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『新年を迎えて』 伊住公一朗
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(写真:平成26年今日庵初釜式にて)

明けましておめでとうございます。
新年を迎えてから半月が経ちましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さて、京都での初釜式を無事に終え、明日からは東京での初釜式が始まります。
毎年のことではありますが、全国から来られた方々とお目にかかり、新年のご挨拶をさせていただいていると、「いつかその地を訪れたい」という気持ちになります。
様々な行事で各地に伺うときには、皆さまとお会いできることはもちろん、それぞれの土地の風情や文化に触れられることも私の楽しみです。
今年はどこでどんな発見があるのか、考えただけでワクワクしてきます。
2014年も茶道を通して多くの方に出会い、少しでもお茶の心を広められるように頑張っていきたいと思います。
今年も宜しくお願いいたします。

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平成26年今日庵初釜式
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  平成26年甲午歳今日庵初釜式が1月7日から12日までの6日間にわたり行われ、2000名を超える多数の賀客が来庵されました。
  今日庵初釜式の詳細記事はこちらからご覧いただけます。


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茶人の逸話:織田有楽
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  今回は、織田有楽(うらく)をご紹介します。有楽は信長の弟ですから、利休にとって弟子というよりは旧主の一族ということで、別格の存在だったようです。
  有楽が利休を訪ねたおり、ちょうど利休が茶入の蓋をあれこれ選んでいたところでした。利休は、古い蓋の中から大き目で茶入の口にきっちり合わないものをかえって「面白い」と選び、それを有楽に見せました。この利休の工夫に感心した有楽は、自分の茶入にも同じように古くて大き目の蓋を選び使っていました。ある時、利休がやってきたので、件の茶入を取り出して見せたところ、利休がいうには、「茶入に大き目の蓋を選んで使うことを良い考えだと思われたようですね。しかし有楽公の茶入には新しくてぴったりと合う蓋のほうがよく似合いますよ」、と、自分の工夫が必ずしもどの茶入にも通用するものではないことを、やんわりと諭されたそうです。
  またある日、有楽の側近くに仕える者が「今日の茶会にはどの花入をお使いになりますか」と、有楽に尋ねたところ、「今日の茶会に使う花を見てみないことには、花入は決められぬ」と、答えたということです。普通は使用する花入を選んでから、季節・趣向などによって使われる花を決めるのですが、有楽は逆に花にあわせて花入を決めていたようです。このようなところに有楽独自の美学が見られるのではないでしょうか。『茶話指月集』、『閑夜茶話』(かんやちゃわ)にそれぞれ載っているお話です。


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