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第29号(平成25年12月15日配信)

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『2013』 伊住公一朗
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(写真:バーレーン王国バハレーン日本人学校にて)

こんにちは!
いよいよ年の瀬も近づいてまいりました。
最近、年齢を重ねるごとに一年があっという間に感じます。
それだけ充実した一年を送らせていただいているという事でしょうか。
宗家では越年準備として大祓い(大掃除)、餅つき、そして31日の除夜釜と毎年決まった行事を済ませ新年を迎えます。
毎年一年に思いをはせながら除夜釜でホッと一息。
皆様にとって今年はどのような年でしたか?
私は11月に結婚し、来年はさらなる飛躍の年になるよう努めていきたいと思います。
今年も各地で沢山の同門の皆様とお会いすることができました。
来年も単独出張、献茶式と盛りだくさんで皆様にお会いできることを楽しみにしております。
今年も一年ありがとうございました。

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茶人の逸話:千 道安
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  これまで茶人の逸話で取り上げた利休の七人の弟子─利休七哲(りきゅうしちてつ)─は、『江岑夏書』(こうしんげがき)に選ばれたメンバーをご紹介してきました。しかし書物によってメンバーに違いがあるのはよく知られています。そこで今回と次回の2回に亘り、『江岑夏書』には見られない茶人の逸話をご紹介します。まずは利休の長男である千 道安(初名は紹安)です。
  秀吉が、「京都の方広寺の大仏殿の内陣で点前ができる者は誰かいるか」と利休に尋ねた時、利休はしばらく黙考し、「道安だったらできるでしょう」と答えたそうです。壮麗な大仏殿で、雰囲気に左右されることなく点前をするにはかなりの力量が必要でした。利休の道安に対する評価の高さがわかります。
  またある時、道安が甥の宗旦を連れて古田織部の茶会に行ったときのこと。織部が道安に炭所望をしたところ、道安はあっさり承諾すると炉中を直し、炭を置いたそうです。その茶会の帰り道、宗旦が道安に「天下一の茶の湯宗匠が整えた炉中を直すとは大変失礼なことではないですか」と問いただしたところ、道安は、「天下一の宗匠であろうが、なかろうが、炉中の整え方が悪ければ炭は置けないよ」とさりげなく答えたそうです。権威に動じない道安の態度がよくわかります。いずれも『茶話指月集』という宗旦から聞いた話をまとめた書物にあるお話です。


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