戻る
写真:釜淵の滝(岩手県花巻市)
第11号(平成24年6月15日配信)

『忘れない』伊住公一朗

  こんにちは!
  先般、岩手南支部主催の東日本大震災復興祈念茶会が行われました。
  震災から一年も過ぎ、私たちにできる事。
  それは決して「忘れない」という事です。
  メディアで放送されないから興味を失うのではなく、「忘れない」でください。
  お茶の心でみんなで助け合いましょう。支え合いましょう。
  今日も良い一日になる事を願っております。

-------------------------------------------------
東日本大震災復興祈念茶会
主催:岩手南支部(宮澤啓祐支部長)
-------------------------------------------------

  5月26日(土)・27日(日)、岩手県花巻市の紅葉館において東日本大震災復興祈念茶会が開催され、坐忘斎家元夫妻、千万紀子様が出席。多数の来賓、東北地区内の各支部役員、会員など約650名がつどいました。

□□□呈茶席□□□
  ロビーに設けられた呈茶席では「みちのくの山里」をテーマに釜が懸けられました。気取らず、飾らないことを心掛けたというお席では地元の風情を感じさせるお道具が取り合わされました。


  お菓子は平泉中尊寺にある月見坂の杉並木をイメージした杉月。釜は南部鉄器の名工・佐藤勝久作で、周囲の竹林を髣髴とさせる造形。棗の木賊も近隣のものです。主茶碗は男性の点前に合わせた力強い鼠志野。そして、茶杓は井口海仙宗匠作の「手に手」、数茶碗は手つなぎ唐子と、郷里の趣向の中に復興への願いを込めた席となりました。


□□□濃茶席□□□
  濃茶席では追悼とこれからの岩手南の趣向でおもてなし。白い大山蓮華と鎌倉彫香合、床脇には世界遺産・平泉の組み木細工がかざられました。茶杓は坐忘斎家元作の燈心。また陸前高田の一本松にかけて主茶碗は銘「十八公(松の字を分解したもの)」。追悼だけではなく、光にむかってたくましく生きていきたいという席主の想いのこもった一碗を手に、参加者は復興への祈りを捧げました。



□□□薄茶席□□□
  地元のものにこだわったという薄茶席では、花も岩手の野にあるもの、近隣の台焼茶碗に秀衡塗の菓子器が用いられました。茶碗には岩手南支部を構成する5つの市の花である桜、菜の花、椿、早池峰薄雪草(はやちねうすゆきそう)、百合が描かれ、岩手県の花である桐の棗で絆を表現しました。点前座の平生棚には席主の平生に戻ってほしいという願いがこめられた席で、心温まる一碗が呈されました。



□□□香煎席□□□
  香煎席のテーマは宮沢賢治の世界。花巻市にゆかりの井堂雅夫氏による版画「銀河鉄道の夜」が掛けられ、バイオリンの花入に賢治の愛したバラの花が入れられました。茶碗には地元の台焼のほか、銀河の風景を連想させる唐津茶碗が用いられました。参加者は郷土岩手を愛した宮沢賢治に思いを馳せ、童話の世界のひと時を楽しみました。



-------------------------------------------------
茶道資料館学芸員出張所
夏季特別展「京三条せともの屋町」
会期:6月23日(土)〜9月17日(月・祝)
-------------------------------------------------

  今回の夏季特別展では、これまでに明らかになってきた京都のやきもの屋の様相を、特に茶道具に視点を当て、今日まで伝来してきたやきものと出土したやきものとを比較しながらご紹介します。多くの皆さまの来館をお待ちしております。

展示作品紹介 信楽一重口水指

  素直な筒形をした信楽の一重口水指です。胴にわずかに歪みを加えられており、焼成中の灰被りにより、鮮やかな釉流れを見せています。江戸時代の初め頃に古田織部ら茶人とも交流を持ち、「新兵衛信楽」にその名がみられ、茶道具の製作にも関わっていたとされる有来新兵衛の屋敷跡からも同様の作行きのものが出土しています。桃山時代の茶陶の造形をよく表現しており、また当時の流行を窺える一品であります。


戻る