千 玄室大宗匠、フィンランドを訪問
マッティ・ヴァンハネン首相に茶道紹介




  日本は1919年5月、ロシアから独立したフィンランドを承認し、今年で両国の外交関係は90周年を迎えます。
  今日、両国間には何ら政治的問題も存在せず、ほぼ全ての分野で協力関係を築いており、両国の大学間では、研究者や学生の交流を通じた学術協力が盛んに行われるようになりました。
  千 玄室大宗匠は、在フィンランド日本大使館の要請を受けて6月20日より23日までフィンランドのヘルシンキを訪問されました。大宗匠の同国訪問は2004年に世界遺産・スオメンリンナ島の要塞群の中に建てられた「徳有庵」の茶室披き後5年ぶりの訪問となり、滞在中は数々の行事に臨まれ、更なる友好交流に貢献されました。
  大宗匠は、関西日本フィンランド協会会長を務められており、裏千家では1988年以降、毎年フィンランドからの留学生を受け入れています。

  6月20日、大宗匠は夏至祭の休日の為、やや静かなヘルシンキに到着。空港にて丸山博大使の出迎えを受けられた後、市内のケンプホテルヘ。ホテルでは淡交会フィンランド協会のヨウニ・エロマー会長はじめ協会員の歓迎を受けられました。
  翌21日、到着前日までの曇った天気は夏至祭に相応しい澄んだ青空にかわり、大宗匠はトゥルクに次ぐフィンランド第2の古都ポルヴォー市を視察されました。

  6月22日、大宗匠はヘルシンキ市内の国立シネブリコフ美術館を訪問。同美術館では日本・フィンランド外交関係開設90周年記念として裏千家の協力の下、1月29日より6月29日まで「茶道−日本の茶の湯」特別展を開催中で、館長のウラ・フタマキ博士が自ら案内と解説をされました。


フタマキ館長と茶道展を視察される大宗匠


フィンランド人によって美術館に特設された茶室


  同日の正午からは大橋寛治 関西日本・フィンランド協会副会長も大宗匠に同行して、丸山大使主催の歓迎昼食会に出席。


日本国大使公邸にて(中央 丸山博大使)


  その後、フィンランディアホールでの茶道講演に臨まれました。
  ホールには、開場と同時に多数の入場者が会場内に設えられた呈茶席に進み、長い列を作りました。講演会では、丸山大使が挨拶の後、大宗匠を紹介。大宗匠は、「茶道−一碗からピースフルネスを」と題して講演。「茶道はグリーンです。フィンランドには自然に恵まれた緑があります」と、400名程の聴衆を前に環境問題の先進国であるフィンランドの人々に、人へ、そして自然への思いやりの心を説かれました。講演後の茶道デモンストレーションでは、大宗匠自らが解説をされ、また会場内からの多数の質疑応答にも丁寧に答えられました。








  6月23日午前、大宗匠とマッティ・ヴァンハネン フィンランド首相の会見と呈茶がケサランタという愛称で知られる首相官邸で行なわれました。
  (“ケサランタ”は1873年に建築家であったF.L.カロニウスの別荘として完成しました。 1904年に国によって購入され、フィンランドの首相官邸として数十年の間使用されています。)


首相官邸“ケサランタ”


  ヴァンハネン首相は、フィアンセのシルッカ・メルタラ女史、エスコ・ハミロ首相府次官補らと共に官邸内に特設された茶席にて大宗匠が首相ら10数名の側近に呈されました。
  呈茶の後は、大宗匠の指導の下、メルタラ女史が点てられた一碗を首相が喫されるといった場面もあり、茶席は終始和やかな雰囲気に包まれました。






  同日午後、ヘルシンキ港入り口にあるスオメンリンナ島内の茶室「徳有庵」にてヘンナ・ヴィルックネン教育大臣をはじめ、サトゥ・パーシレフト教育省参事官、ペッテリ・コステルマー フィンエアー会長夫妻などフィンランドの政財界の方々を迎えて茶会が催されました。徳有庵は5年前に京都より派遣された大工によって建設されたもので、ヴィルックネン教育大臣らは、18世紀のレンガ屋根を取り入れた世界遺産に建つ世界唯一の茶室にて一碗を喫されました。




文化遺産、スオメンリンナの要塞群


  ヘルシンキご滞在最終日の夕刻、ホテルのレストランにて大宗匠を囲んでこの行事に携わった大使館館員、フィンランド協会会員ほか関係者が一同に会し夕食会が行なわれました。白夜のもとで何時までも和やかな会が続きました。