第8回茶道文化賞
―淡交会第115回全国総会において表彰―




  第8回茶道文化賞は、昨年10月13日に選考委員会が開催され、受賞者が決定しました。
  2月26日に行われた淡交会第115回全国総会の席上、千 容子副理事長より選考経過と受賞者が発表され、千 玄室大宗匠、千 宗室家元よりそれぞれ褒賞状と楯、そして記念品が贈られました。

選考委員
  千 容子家元夫人・淡交会副理事長
  牛尾治朗氏(ウシオ電機株式会社代表取締役会長)
  熊谷信昭氏(兵庫県立大学学長・大阪大学元総長)
  坂本眞一氏(北海道旅客鉄道株式会社相談役)
  芳賀 徹氏(東京大学名誉教授・京都造形芸術大学名誉学長)
  八村輝夫氏(鳥取銀行特別顧問・鳥取商工会議所会頭)
  日野西光尊氏(中宮寺門跡)

選考経過と受賞理由を発表される家元夫人


○茶道文化賞:松本静枝(宗静)氏(茶道家)
1920年ハワイ生まれ。太平洋戦争開戦の年に訪日した際、淡々斎宗匠に出会い裏千家に入門。直門・すみれ会で学ばれた。
戦後米国に帰国され、日米の友好交流促進には両国の相互理解が必要であることを確信し、茶道精神を伝えるために多くの茶道愛好家・茶道修道者を指導・育成された。また、全米各地で積極的に茶会を催すなど、茶道を通じて日本文化の普及・発展に努められた。
1994年には、米国連邦政府芸術財団からもその功績が認められ、“National Heritage Fellowship”(日本の人間国宝に相当)をヒラリー・クリントン大統領夫人(当時)より直接受けられるなど、米国に茶道を根付かせた功績が高く評価されている。
大宗匠と家元から褒賞状を受け取られ、万感胸に迫る謝辞を述べられる松本宗静氏


○茶道文化振興賞:中村義明氏(数寄屋大工)
1946年、数寄屋建築の名匠・故中村外二氏の次男として京都市に生まれる。現在、中村外二工務店代表。
「用と美の調和」に視点をおき、時代に適応した茶室建築を手掛け、利休から続く侘び茶の精神を伝承する茶室空間を多数作り出して来られた。
特に、平成7年に裏千家4代仙叟宗室居士350年遠忌を記念して千 玄室大宗匠が石川県小松市に茶室「玄庵」を寄贈された際は施工を担当し、仙叟好みを現代風に置き換えた茶室を造るなど、歴史に残る茶室建築を通して茶道文化の隆盛に寄与されている。


○特別功労賞:臼井史朗氏(著述家)
1920年岐阜県大垣市生まれ。大谷大学時代は鈴木大拙氏に師事し、宗教学を学ばれた。卒業後は弘文堂に入社し、アテネ文庫の創刊号「茶の精神」(久松真一著)の出版に携わられた。
その後、弘文堂を辞して渡米。日本文化を紹介するためにカルチャーセンターを創設し、茶道の普及に努める一方で、裏千家の海外支部の設立にも尽力するなど、海外での茶道の普及・発展に貢献された。
帰国後は、1952年に株式会社淡交社(1949年創業)に入社、「淡交」「なごみ」を茶道界屈指の雑誌に育て上げるなど、国内外における茶道文化の水準の向上に寄与された。