裏千家茶道留学生によるクリスマス茶会

− 炉辺に集う「ここ炉」の茶会 −


  12月7日、茶道会館では裏千家学園外国人研修コース「みどり会」によるクリスマス茶会が催されました。毎年この時期に行われる茶会は、今年で31回目。6カ国9名のみどり会留学生が、この年お世話になった方々を招き、感謝を込めて一碗を振舞いました。

  色を競った木々が葉を落とし、街はすでに冬の装い。凛と冴えた冷気の中、茶室は炉の心地よい温もりで満たされ、静かに客の到来を待ちます。今年のテーマは「ここ炉(=心)」。
  祖国を離れ、この地で修道に励むみどり会生にとって、炉を囲むひと時は心和む瞬間。まるで我が家にいるような懐かしい寛ぎの感覚。そんな炉辺で大切な方々に感謝の一碗を供し、心通わす時間を分かち合いたいという彼らの願いが込められました。
  この日の招待客は千 宗室家元夫妻はじめ宗家関係者方や友人など約130名。待合には手作りのリース、雪を被ったヨーロッパの古い町並みの模型、北欧の代表的な飾りである「クリスマスの山羊(ユール・バック)」、各国のクリスマス飾りが客を異国の祝祭へと誘います。一画の立礼席の喫架には葉書大の画用紙と鉛筆が置かれ、床にはみどり会生全員が同じ画用紙に描いた9枚の心のイメージが飾られています。亭主からの問いかけに客は自らの心のイメージを画用紙に描き、本席へ。


異国情緒溢れるクリスマス飾り見た目は可愛いユール・バック
昔は吉凶ともにもたらす怖しい存在でした


「この山羊ってそんなにすごいの?」
「イエース!メチャスゴイデース!」
心のイメージ
お家元からも一筆いただきました


  「紅炉上一点雪」。鵬雲斎大宗匠による一行物の足元にはポルトガルのアンフォラに入れられた椿と南京櫨。侘びた風情が客の心をことさら炉の温もりに向かわせます。
  ロシアの白樺の皮製ハート型小箱を香合に、薄器にクリスマスらしい冬景色が描かれたロシア製小物入れを、ドイツの銀カップは火入にと、それぞれ持ち寄った各国の道具を見立て使いするあたりはいかにもみどり会らしい楽しさ。また山里棚に置かれた、たっぷり灰釉が掛かった水指はみどり会生の陶芸家ベンジャミン・ギャビンケインの作品、蓋置は火伏に霊験あらたかな愛宕山の柴で作るなど、学生手作りの道具も随所に取り入れました。
  主菓子は餡から手作りした白餡とカボチャ餡の茶巾絞り。生姜の風味をプラスするのがみどり会風です。先端に金箔を乗せ、銘は「灯し火」。
  最後にみどり会生がこの日のため製作した京都・桂窯の楽茶碗と京都・茜窯の色絵茶碗で、一服の薄茶が呈されました。


手、手が震える・・・


お家元との会話でいつしかリラックス 銘「灯し火」味も光ってる?


Merry Christmas! みんないい笑顔


  帰り際、玄関で一足早いクリスマスプレゼントが一人ひとりに手渡されました。袋の中はみどり会手製の練り香とクリスマス菓子、みどり会生の写真家、ジョン・フォグによる炉の写真と、同じくみどり会生のグラフィック・デザイナー、マルチナ・ポップ製作のポストカードが添えられています。茶会の後も亭主と客の間に埋み火のような暖かい余韻が残りました。