京都芸術センター「明倫茶会」
〜裏千家留学生が茶道の国際性を表現〜


海に浮く島のような5つの点前座


  7月22日、裏千家学園茶道専門学校別科外国人研修コース(みどり会)の茶道留学生が、京都市中京区の京都芸術センターにおいて月釜の席主を務め、来場者に心をこめて一碗を呈しました。
  京都芸術センターは、小学校の統廃合のため閉校となった元明倫小学校を改築して、京都における芸術振興の拠点施設として、2000年にオープンしました。千 宗室家元は開設当初から同館の館長に就任、地元の伝統文化を現代に活かしつつ、美術、音楽、演劇などさまざまな分野の芸術が出合い新たなものを生みだす場として、独自の事業を展開しています。
  毎月1回開催される「明倫茶会」はセンター来場者のための茶会として、席主は,毎回各界で活躍している方がたが順番に担当し、席主の趣や、持ち味が感じられる茶会となっています。裏千家留学生は今回が4回目の懸釜で、センターのオープニング行事でも茶席を担当しています。


床の間の説明


  今回のテーマは「お茶は万国共通語」。
  日本の伝統文化である茶道は、この50余年の間に世界の7つの海を渡り五大陸に拡がりました。茶道の普遍性を来場者に感じてもらいたいと、道具の取り合わせから会場の設えまで工夫を凝らしました。
  来場者はまず待合へ通され、床机に腰掛けます。5台の床机にはテーブルクロス、籐製のマット、絨毯やカーペットなど、模様も織りもさまざまな敷物が敷かれ、本席への道標となりました。
  案内に促がされて本席の扉を開くと、中は広く薄暗い講堂。ライトアップされた床の間には、千 玄室大宗匠の染筆「万里同風」。中国製の星座球が香合に見立てられ、モルジブ生まれの椰子の実が釣船花入に。ココドメル(海のココナッツ)の名にふさわしくゆったりと揺らいでいました。いよいよ航海の始まりです。


広大な世界をイメージする床飾り


  5つの立礼席は五大陸を表し、それぞれに「アジア」、「アメリカ」、「ヨーロッパ」、「オーストラリア」、「アフリカ」にちなんだ道具の取り合わせ。アジア席の茶杓は、千 宗室家元作の「寿恵比呂(すえひろ)」。茶道のさらなる発展と普及への想いを表現しています。



アジア席


アメリカ席



ヨーロッパ席


オーストラリア席



アフリカ席


  菓子は老松製のくずやき、銘は「千尋(せんじん)」。大陸を結ぶ広大な海を表すと同時に、国境を越えて人の「和」が広がるよう願いを込めたものです。
  亭主が手造りした茶碗が主客の心を結びました。



手造りの茶碗


  当日は、事前に申込みをされた130人を越える市民が来席。
  「世界旅行をしているようで楽しかった」「お茶の深さと広さを見せてもらいました」「シンプルな盆略点前と多様な道具の対比が面白かった」「薄暗い講堂でライトアップされた点前座がまるで島のようだった」「2服目を亭主の手造りの茶碗で頂き感激です」「世界の広さを改めて感じました」など参加者の感想もさまざま。――「お茶は万国共通語」。来場者は茶道の国際性を肌で感じるものとなりました。