第11回東アジア茶文化シンポジウム
第11回パネルディスカッション-東アジアの文化と平和-


  9月28日(火)および29日(水)、韓国釜山市において「第11回東アジア茶文化シンポジウム」ならびに「第11回パネルディスカッション-東アジアの文化と平和-」が開催されました。
  このシンポジウムは、千 玄室大宗匠の発意により、茶文化研究の学術的交流と東アジア地域の友好関係の更なる充実を図ることを目的に始められました。2004年に中国・天津市において第1回を開催し、その後は日韓中およびハワイの各都市を巡回し、その成果を積み重ねてきました。
  来賓、日韓中はじめアジア各地の裏千家淡交会及び海外協会会員、裏千家インターナショナルアソシエーションの会員、また釜山外国語大学校の学生など延べ340名が参加しました。

 【日韓中平和祈念献茶式】
  午前9時、釜山外国語大学校にて、日韓中平和祈念献茶式が執り行われました。はじめに潘 基文 国際連合事務総長からの平和のメッセージが読み上げられた後、厳かな雰囲気の中、大宗匠が三ヵ国の国旗に一碗を捧げました。


【東アジア茶文化シンポジウム】

  献茶式後、同会場において、関根秀治 裏千家事務総長・一般社団法人茶道裏千家淡交会副理事長の司会のもと第11回東アジア茶文化シンポジウムを開会。まず始めに、大宗匠より主催者として歓迎の挨拶が述べられました。
  次に本事業の共催団体である釜山外国語大学校を代表して、鄭 海鱗 釜山外国語大学校総長が挨拶をされました。

鄭総長挨拶

  来賓として、長嶺安政 駐大韓民国日本国特命全権大使、閻 鳳蘭 中華人民共和国駐釜山総領事、金 炳圻 釜山広域市文化観光局長、白 宗憲 釜山市議会議長よりご祝辞をいただきました。

長嶺大使閻総領事

金局長白議長



◇主  催一般社団法人茶道裏千家淡交会

釜山外国語大学校
◇後  援大韓民国外交部

在大韓民国日本国大使館

中華人民共和国駐釜山総領事館

釜山広域市

  今年のシンポジウムは『一つの流れ 和の心』をテーマに進行。本テーマに基づき、大宗匠による基調講演が行われました。大宗匠は初めての渡米経験に触れ、「みんな、地球の上で共に生活しているのだから、手を携えて本当の意味での平和を考えなければいけない」と話されました。



  基調講演の後、張 建立 中国社会科学院日本研究所文化研究室室長兼教授の進行のもと、第一線で活躍される研究者の研究発表・指定討論が下記の内容で行われました。




第11回東アジア茶文化シンポジウム

司会 関根秀治 茶道裏千家淡交会副理事長
進行 張 建立 中国社会科学院日本研究室室長兼教授
◇基調講演千玄室大宗匠
◇研究発表T「日本茶文化の〈和〉の流れ」
    盧 近淑 圓光大学校教授
      指定討論: 櫻井繁樹 京都大学大学院総合生存学館教授
◇研究発表U「『茶道と和と道教』−万物照応−」
    関根秀治 平安女学院大学伝統文化研究センター所長兼教授
      指定討論:鄭 暎憙 東国大学校兼任教授
◇研究発表V「『和』理念の形成と流れについて」
  陳 秀武 東北師範大学日本研究所所長兼教授
      指定討論:朴 銓烈 韓国・中央大学校名誉教授
◇研究発表W「韓中日茶文化の共通の志向」
  徐 銀美 釜山大学校中国研究所専任研究員
      指定討論:張 建立 中国社会科学院日本研究所文化研究室室長兼教授
◇総評 朴 銓烈 韓国・中央大学校名誉教授

【研究発表】
研究発表T 盧 近淑氏(指定討論:櫻井繁樹氏)

研究発表U 関根秀治氏(指定討論:鄭 暎憙氏)

研究発表V 陳 秀武氏(指定討論兼総評:朴 銓烈氏)

研究発表W 徐 銀美氏(指定討論兼進行:張 建立氏)

<呈茶>
  淡交会釜山協会による心尽くしの呈茶席が設けられ、裏千家インターナショナルアソシエーションの会員が協力し、参加者をもてなしました。


【大宗匠主催晩餐会】
  夕刻からは、パラダイスホテル釜山にて大宗匠主催晩餐会が盛大に行われました。王 秀雲 中国日本友好協会副会長からのご挨拶に続き、天江喜七郎 元日本国大使・淡交会顧問によるご発声で乾杯。国内外から集った参加者は和やかに交流しました。

王副会長挨拶 天江顧問の発声で乾杯


大宗匠を囲んで


【大宗匠名誉博士号授与式】
  翌29日午前9時、釜山外国語大学校にて千 玄室大宗匠名誉博士号授与式が行われました。鄭 海鱗 総長から大宗匠に名誉経営学博士(経営学)学位が授与され、続いて、碩座教授にも任命されました。このたびの授与は、日本国内外において広く裏千家を組織・運営していることを評価されたもので、大宗匠には初めて経営学での博士号を受けられました。大宗匠は感謝の意を述べられ、「私は伝承者として、一碗のお茶を以て、この釜山外国語大学校のために力を尽くす所存です」と結ばれました。


【パネルディスカッション―東アジアの文化と平和―】
  名誉博士号授与式後、第11回パネルディスカッション―東アジアの文化と平和―が同会場にて開催されました。
  午前10時、張 振興 中国日本友好協会友好交流部部長の司会で開会。王 秀雲 中国日本友好協会副会長からの主催者挨拶に続いて、来賓を代表し森本康敬 在釜山日本国総領事によるご祝辞をいただきました。

王副会長森本総領事




◇主  催一般社団法人茶道裏千家淡交会

釜山外国語大学校

中国日本友好協会

公益財団法人日本国際連合協会
◇後  援大韓民国外交部

在大韓民国日本国大使館

中華人民共和国駐釜山総領事館

釜山広域市

中国国際連合協会

韓国国際連合協会



【基調講演】
  金 容雲 元韓日文化交流会議韓国側委員長により、『和の心』をテーマに基調講演が行われました。日韓中では、『和』という言葉に対する理解に微妙な差があることに触れながら、「お茶は全世界に平和をもたらすものだ」と述べられました。

金 容雲氏



第11回パネルディスカッション―東アジアの文化と平和―

司会:張 振興 中国日本友好協会友好交流部部長
◇基調講演「和の心」金 容雲 漢陽大学名誉教授兼元韓日文化交流会議韓国側委員長
◇意見発表1「孔孟儒家と李退溪の境遇を介して見た国際平和論」
     趙 南旭 釜山大学校名誉教授
◇意見発表2 「広島・長崎の悲劇と韓国分断の悲劇−平和への視座−」
     小此木政夫 慶應義塾大学名誉教授
◇意見発表3 「北東アジアにおける持続可能な安全保障のための新方向」
     劉 江永 清華大学国際関係研究院教授
◇意見発表4「韓日間の平和主義者たちー韓国ドラマで蘇った千利休−」
     朴 明欽 韓日海峡圏未来研究所所長
◇パネルディスカッション  コーディネーター:加藤千洋 同志社大学大学院グローバル・スタディーズ教授

      パネリスト:趙 南旭氏、小此木政夫氏、劉 江永氏、朴 明欽氏、
◇総評     周 瑋生 立命館大学教授



【パネルディスカッション】
  パネリストを務める研究者による意見発表に続き、加藤千洋 同志社大学大学院グローバル・スタディーズ教授の進行のもとディスカッションが行われ、東アジア地域の相互理解・交流促進について、政治・社会・歴史など様々な観点から議論が深められました。



趙 南旭氏小此木政夫氏


劉 江永氏朴 明欽氏


コーディネーター:加藤千洋氏総評:周 瑋生氏

  閉会の挨拶として、大宗匠が「北朝鮮を含めて皆が一体となり、力を合わせることが、恒久的な平和の実現には望まれる」と訴えられました。参加者からも質疑、発言があり、世界平和の実現のためにも、世界に茶文化を通じてメッセージを発信しつづけることの大切さを確認する機会となりました。



<呈茶席>
  前日のシンポジウムと同様に呈茶席が設けられ、参加者は一碗を楽しみました。