裏千家ヨーロッパのつどい
−ヨーロッパにおける裏千家茶道布教の集大成−


  平成18年5月22日(月)から25日(木)までの4日間、イタリア・ローマで「裏千家ヨーロッパのつどい」が開催されました。
  1958年ベルギーのブリュッセルにて開催された万国博覧会に千 玄室大宗匠(当時 若宗匠)が茶道使節として参加、ヨーロッパに初めて日本の総合伝統文化である茶道を紹介されてから、布教半世紀を迎えようとするにあたり、「同門のつどい イン・ハワイ」、「茶道裏千家淡交会北米大会」、「茶道裏千家淡交会中南米大会」に続く世界大会として開催されたもの。つどいには千 玄室大宗匠が出席、ヨーロッパ各国はもとより日本、北米、中南米、東南アジア地域の同門社中約500名が参加して、式典、平和祈念献茶式、記念茶会、大宗匠主催記念晩餐会、名誉学位授与式など多彩な行事が行われました。


記念式典




  式典は22日に紀元78年頃の国家記録保管所の遺跡の上に建つローマ市庁舎プロトモテカ・サロンで開催。プロトモテカ・サロンはローマ市庁舎の中でも、殊の外由緒のある重要文化財の広間。ローマ市長代理マウリッチオ・バルトルッチ参事官、駐イタリア日本国特命全権大使中村雄二閣下夫妻、駐ヴァチカン日本国特命全権大使鹿野軍勝閣下等の方々が来賓として出席されました。


ローマ市庁舎プロトモテカ・サロンから
   古代ローマの遺跡フォロ・ロマーノを望む


式典会場(ローマ市庁舎プロトモテカ・サロン)


  千 玄室大宗匠、裏千家淡交会ローマ協会エンリコ・ダンテ会長、バルトルッチ参事官の挨拶に続き、「つどい」直前に就任されたジォルジオ・ナポリターノ伊大統領からの祝辞が、淡交会ローマ協会レナード・ドルランディ理事によって代読されました。


大宗匠特別表彰


  また、茶道の普及、淡交会の発展に多大な功績のあったことから、淡交会ローマ協会エンリコ・ダンテ会長、淡交会パリ協会アンドレ・ロス会長に大宗匠特別表彰が、ヨーロッパにおける茶道の普及に尽力された功績に対して、永年会員12名に総本部表彰が贈られました。また、特別にお許しを頂いて、許状・資格の親授式が行われ、一同今後の修行の励みとなりました。
  総本部表彰者は以下の通りです。

ベルギー協会ピエール・ドゥ・ベテュヌ会長
ハンブルグ協会竹内朝子会長
ロンドン出張所イネス・クロプリィー
ミュンヘン協会大矢幸男、寺田誠子
ローマ協会エンマ・ディ・ヴァレリオ、デイアナ・ブルックマン

アンドレア・ファーラ、本田克美、水井彩子
スペイン協会ハビエル・マルチネス・ヒル、ハビエル・ヒル


平和祈念献茶式

  23日平和祈念献茶式が、千 玄室大宗匠によりベネディクト会の総本山聖アンセルモ教会にて執り行われました。
  平和祈念献茶式はベネディクト会管長ヴォルフ神父、同会トニーニ神父、聖アンドレ修道院院長ベテュヌ神父、日本司教団ローマ事務所所長和田神父が行なうミサの中で厳粛裡に執り行われ、大宗匠は世界各地からの社中約500名が見守る中、二碗を献点、祭壇に供えられました。


平和祈念献茶式 於 聖アンセルモ教会



聖アンセルモ教会




千 玄室大宗匠主催レセプション

  23日(火)夕刻には、ローマでも格式を誇るセントレジス・グランド・ホテルで駐イタリア日本国特命全権大使中村雄二閣下夫妻、高岡望公使、駐ヴァチカン日本国特命全権大使鹿野軍勝閣下、ローマ日本人学校池田公男校長、イタリア日本友好協会事務局長サルバトーレ・ダミアーニ夫妻、ローマ大学ダニエラ・サドゥン東洋文学部教授、パオロ・デッシィ氏等々各界から来賓をお迎えして、大宗匠主催レセプションが開催されました。


大宗匠主催レセプション裏千家淡交会パリ協会
アンドレ・ロス会長の挨拶


 会場は弦楽四重奏楽団の演奏が流れる中、大宗匠の行かれるところに内外の人の輪ができ、和やかな雰囲気のレセプションになりました。






記念茶会

  記念茶会は24日(水)ローマ日本文化会館にて催されました。ローマ日本文化会館は1962年海外初の日本文化会館として建設され、イタリア製ジノリの皆具を使った欧州席A(濃茶席)はローマ駐在講師の野尻宗命が担当、欧州席B(薄茶席)はロンドン駐在講師木村宗啓、デュッセルドルフ駐在講師倉本宗信、パリ駐在講師堤宗穂が中心となり、ヨーロッパ各地の特色ある見立ての道具を使った茶席となりましたが、ヨハネ・パウロ2世直筆の「peace」の軸が掛けられ、ひと際参加者の注目が集まりました。


記念茶会 欧州席A(濃茶席)


記念茶会 欧州席B(薄茶席)


ヨハネ・パウロ2世の直筆「peace」


  日本席(薄茶席)はUIA(裏千家インターナショナルアソシエーション)が担当しました。


記念茶会 日本席(薄茶席)


  引き続き、午後6時からシンポジウム「ヨーロッパと茶の心」が行われました。「ヨーロッパのつどい」の参加者や茶道に関心のあるイタリアの一般参加者等々200名を越える参加者が集まる中、淡交会ベルギー協会会長ピエール・ド・ベテュヌ神父は「私の裏千家との出会い、キリスト教修道士の感想」を題として、1983年20名のキリスト教修道士・修道女と共に仏教僧との宗教交流で京都に滞在、その際15代鵬雲斎家元(当時)と登三子夫人にお会いし、茶の精神の真髄に深く触れたことを発表。また、裏千家フライブルク連絡所駐在講師ウルリッヒ・ハース氏は、天龍寺で修行した経験から「茶の湯とその精神性、禅の視点から」という題で発表。ルーマニア、ポーランド、アメリカの参加者などから活発に質問や感想の発表が行われました。


ローマ大学より大宗匠に名誉学士号を授与


ローマ大学


  25日、千 玄室大宗匠はローマ大学より名誉学士号を大学の慣例に則って授与されました。ローマ大学は1303年教皇ボニファティウス8世により、聖職者のための大学として設立されたヨーロッパで最も古い歴史を持つ大学のひとつで、この度の「名誉学士号」は同大学最高の学位で、他の大学では「名誉博士号」にあたります。フェデリコ・マシーニ東洋言語文学部長、マリー・テレサ・オルシー主任教授から、学位授与は茶道精神の普及活動にイタリア及び全世界でかけがえのない貴重な貢献をされたことによるとの推薦理由が述べられた後、レナード・グァリーニ学長から名誉学位「LAUREA HONORIS CAUSA」(名誉学士号)が授与されました。その後、亭主に倉斗宗覚業躰、半東に白波瀬宗幸業躰による茶道デモンストレーションが行われ,学長以下列席の教授方、来賓の方々が熱心に見入っていました。


ローマ大学「名誉学士号」授与式


茶道デモンストレーション


打ち上げパーティ

  ヨーロッパのつどい最後のイベントとなった打ち上げパーティは、25日夕刻、爽やかな風が吹き抜けるテベレ川畔のアンティカ・ドガーナで行われました。16世紀の衣装をまとった楽団が演奏とダンスを繰り広げる中、日本と海外の参加者が一緒になって、最後まで話しが尽きず、名残惜しい打ち上げパーティとなりました。


打ち上げパーティ会場 アンティカ・ドガーナ