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炭の役割

千 宗室

  開炉の時期を迎えました。私は炭手前が好きで、なかでも釜を上げた時の下火の寄り添う姿が愛らしい炉の炭手前が楽しいと感じます。
  下火は初炭・後炭と併せて席中の三炭に挙げられますが、下火そのものはメインになるわけではありません。一所懸命に冷たい炉中や灰を温めたところに、いよいよ初炭手前として主役の炭を迎えるという、いわば前座のような役割でしょう。とはいえこの前座がなくては炭火はおこりません。上手に入れられた下火はほどよく灰をまとっている状態で、寄り添った姿にほのぼのとしたものがあります。それゆえ下火は特に初炭に対して大事な役割を担っており、三炭として初炭や後炭と同格に扱われます。
  稽古をなさる際、自分のつぐ炭の役割を意識してください。初炭をつぐ人はよい下火となって次の炭が入ってくるのを迎えてあげられるようにと考え、後炭を担う人は初炭がよい下火に変わってくれたことに感謝しながらついでいく。その流れの中で炭は活きます。茶事であれば最後客が立った後、亭主が自服する際にはゆるゆる静まりつつある湯相になるというのは、この一連の流れがあってこそのものです。
  ところで、初炭もおもしろいですが後炭の炭を触る火箸を通じて指先から心の芯まで温かみが伝わってくるその味わいは正に「茶味」でしょうか。炭をついでいく時に炉を中心にして席中のほのかな明るさに変化が出てきます。夜や雨などが降って真っ暗な日はともかく、日中に電気を落としてみるとその部屋の暗さを体感し、初炭と後炭の炉中の肌合いの違いも知ることができます。そういったところからも稽古の楽しさを見出だしていただければと存じます。

淡交タイムス 11月号 巻頭言より