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「今」と向き合う

千 宗室

  コロナ禍でさまざまな行事が制約を受け、皆さま方とお目にかかる機会が減っていることを大変残念に思っております。
  ちょうど一年ほど前、たまたま同世代の他流の宗匠から電話がかかってきました。その時にいみじくも彼が「我々の世代は歴代で初めて戦争も政情不安もなく、大きな時代の転換点にも当たらない穏やかな時代を茶の湯者として過ごせると思っていたけれど、これはとんでもないことです」と言いました。私も同じような気持ちでしたので、同意しつつ二人でいろいろなことを話して電話を切りました。その当時でさえ新型コロナウイルスの影響がまさかここまで長引くとは思っていませんでした。
  昨年から圓能斎宗匠考案の各服点などを皆さまにお示ししてまいりました。このような状況の中でも、例えば賀寿や教授者としての祝い事、支部や青年部の節目の行事で「何かなさねばならない」と気を揉んでいる方がおられるのではないでしょうか。「かつてはこうだった」ということに囚われずに、「コロナ禍だからこうしよう」というふうに気持ちを切り替えてまいりましょう。「こうしなくては仕方がない」ではなく、「今はこのような形でいいんだ」と受け入れる。目の前の一日にしっかりと向き合い、鷹揚な気持ちで茶の湯を楽しんでください。厳しい残暑を乗り切り、深まる秋に向けて皆で工夫の成果が花開くよう努めてまいりたいと存じます。

淡交タイムス 9月号 巻頭言より