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茶の湯の「働き」

千 宗室

  二月下旬、昨年中止した冬期講習会を二年振りに実施いたしました。新型コロナウイルス感染症対策として、密を避けるためにこれまでとは少し違う形にせざるを得ないということで講師をつとめる業躰とも相談し、実技では一部ゼミ形式を取り入れました。
  「いつもと違う」状況が既に一年以上続いています。私には一歳半になる孫娘がおります。もの心ついた頃から彼女が見ている大人は皆が常にマスクをしています。孫は散歩に連れられていったりする際、驚いたことに建物の入口に置いてあるアルコール消毒液を見ると、自分の手をすり合わせて消毒するまねをするのだそうです。小さい子供たちにとってはそれらが当たり前のこととして記憶の中にインプットされ、学習されているのです。孫の振る舞いを見ていると、もしかするとまた一つの時代の節目がやってきたのかもしれないと感じます。
  この先長く、私たちは人と接することに対する不安感や恐怖心、またいたずらに人を疑ってしまうような気持ちを心の中に残してしまうようになるのでしょう。私たちが特殊だと思っていることが世代によっては当然のこととなっている今の生活スタイルは、今後ずっと取り入れていかなければならないかもしれません。茶の湯もここで新たな引き出しを増やすことになったのだと受け止め、その場に応じて誰もが安心できる形を考えることが求められます。これまでと姿が変わったとしても自分をすっとその場所に持っていけるよう工夫するのが、昔から言われている「心の働き」ということです。
  皆さまには、これまで身に付けてこられた基本をベースにして心を働かせる勉強をしてみてください。これからの茶の湯には働き、気配りがより一層必要とされていくのではないかと思う次第です。

淡交タイムス 4月号 巻頭言より