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文化の底力

千 宗室

  謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
  コロナ禍が続く中、政府では早々とアフターコロナの話題が出ており、書店でもそのようなタイトルの本を見かけるようになりました。世の中は〝とにかくウィズコロナを何とか凌ぎ、アフターコロナにどうすればよいかを考える〟ことばかりに気持ちが向いているようです。けれどもウィズコロナは長く続くと考え、その間にできることを探すほうが無難ではないかと思います。
  一昨年まで当然のように行ってきたことができなくなり、茶の湯の世界も大きく変わってしまったような印象があります。しかし何もかもできなくなったわけではありません。実際このような時だからこそ、圓能斎宗匠考案の各服点を改めて紹介することができました。また、新たなお茶の楽しみ方として、特に若い世代の間でインターネットを利用したリモート茶会が浸透してきたことを心強く存じております。大勢の人が集まれなくなったことを悲観するよりも少人数の集まりを増やし、そこから新たな喜びを見出す努力をしていくなど、この時代に相応しいことを私たちが選択していけばこの困難を乗り切れるはずです。
  昨年、淡々斎宗匠がお建てになった古い建物の押入や納戸を整理していたところ、陣中茶箱が出てきました。太平洋戦争の最中、戦で人の心は荒んでいるけれどもお茶を一服飲んで、少しでも心を平らかにしてほしい―そう願って淡々斎宗匠が各部隊に寄贈されたものの一つのようです。茶の湯をはじめ文化はどのような時代でも必ず私たちとともにあります。消えそうで消えない、見えないけれども実はあるという、ある意味で文化とはしたたかなものでしょう。今年も続くであろうこのコロナの状況下においても前向きな気持ちを忘れず、そこに謙虚ないかりをつけながら、皆さまとともにこの道の歩みを進めて参りたいと存じます。

淡交タイムス 1月号 巻頭言より