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名残りの茶を楽しむ

千 宗室

  例年十月になりますと、稽古に夏を見送る趣向を取り入れたり、秋を迎える心の準備をされる方が多いでしょう。同じ花を使ったとしても夏の残花≠ニいうところを強調するか、夏から秋へ移ろう時期をしっかりと切り抜けてきた草花≠ニいう姿で入れるのか。ほんの少しの触り方で床の風情は大きく変わります。
  点前では中置をすることが増えてきます。中置は少し冷え込みがにじり寄ってきた頃に、「温まってください」ということで風炉釜を客の方に寄せて、水指を勝手付に置いて趣向です。
  こと道具の取り合わせや点前の趣向になると、あれもこれもとつい手を伸ばしてしまいがちになります。道具組はよいものばかりをどんどん出して見せつけるものではありません。何か一つを光らせるために他の道具がそれを支えるようにすることが趣向を一層生かせます。時折「中置で茶筅荘をしてもよろしいですか」という質問を受けることがあります。中置の場合には「珍しい細水指を使うから茶筅荘でよいのでは」と思われることがあるかもしれません。中置自体が既に名残りの風情を楽しむものになっていますから趣向は重ならないほうがよいでしょう。やろうと思えばいろいろできたとしても、それをしないことが侘茶。先人はそのようにして茶の湯に向き合ってこられました。必ずしも厳禁というわけではありませんが、皆さまにはまず基本は何かということを理解した上で、それをしっかりと身につけていただきたいと存じます。
  
  今月は倅・敬史の若宗匠格式披露行事を執り行わせていただきます。
  昨今の情勢から感染予防を鑑み、当初予定より規模を縮小する形となりますが、新たな節目を迎えさせていただくことを有り難く存じている次第です。
  同門の皆さま方には今後ともご厚誼いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

淡交タイムス 10月号 巻頭言より