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守り伝えていく場所

千 宗室

  平成二十五年から七年余りにわたった今日庵全域の茶室の修復工事が無事に終了し、去る六月十一日に咄々斎にて竣工祭を執り行いました。工事を請け負っていただいた京都府をはじめ関係各位に改めて感謝申し上げる次第です。
  淡々斎宗匠は、戦前・戦後のまだ点前作法が統一されていなかった時代に淡交会という組織を立ち上げ、流儀の統一をいの一番に果たされた茶の湯者でした。そして鵬雲斎大宗匠は茶の湯の国際化を通じた文化交流に人生を捧げてこられました。祖父や父の姿を見ながら、私は子供の頃から自分が家を継ぐにあたって何をしていけばよいのか、その答えをずっと探しながら、そうして見つけられずにおりました。
  平成十五年に十六代を継承する頃には、毎朝お参りさせていただいている利休御祖堂の利休居士像の後ろの壁や天井が傷み出し、大掃除の折には各茶室に経年劣化のような箇所を見受けることが多くなりました。ここは五百年にわたって大勢の社中方がそれぞれの時代に通って稽古をし、たくさんの情熱をもって今日に伝えてきた場所であります。これから先、私が何年生きるか分かりませんが、倅の代になった時に安心して稽古をしていけるよう、そしてご先祖様方から伝えられてきた技術と志がこの場をもってしっかりと受け渡されていくように整えることが、私の家元としての最大の仕事だと意識いたしました。その思いをいろいろな方にご理解いただき、お力添えをいただいたお蔭で修復の完了に至ることができました。
  このたび工事は終えましたが、言ってみればまだ出来上がっただけの状態です。歴代の家元と同様に懐かしい咄々斎の床柱の前に座って稽古をし、諸行事を務め、もう一度ここに魂を入れさせていただきたいと存じております。

淡交タイムス 8月号 巻頭言より