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(いにしえ)をたずねる

千 宗室

  去る二月二日、大徳寺聚光院において八代 又玄斎一燈宗室居士の二百五十回忌法要をつとめさせていただきました。無事に一つの節目を越えさせていただき、大変有り難く存じます。
  私たちが今生きているこの令和の時代から、二百五十年前の茶の湯の先人方をご供養するというのはなかなか難しいことです。一般的にはその時代の方の茶道具を集めて茶会で使用したり、資料館などで展示をして茶風に触れてもらえば済むことでしょう。しかし、それだけで果たして二百五十年前と連絡が取れるのだろうか・・・考えておりましたが答えは出ません。そこで、一つの試みとして又玄斎宗匠が好まれたお菓子の図(色絵)を参考にそれを再現し、今日庵席で使うことにいたしました。漉し餡の入った白い皮の饅頭で、上部に鉄板で焦げ目を付けただけの素朴なものです。焦げ目や焦げた香りは一つのご馳走であり、又玄斎宗匠の時代には意外と面白い菓子だったのでしょう。また、当時は貴重だった山芋を極力使わずに作ったその「天焼饅頭」を参列された方々に召し上がっていただきました。
  たかだかそのようなことで二百五十年前のお茶を理解するのは私も含め困難です。けれどもほんの一片でも、記録の奥を解きほぐしていく作業を重ねていくことが(いにしえ)を知るためには欠かせません。私たちは「一期一会」や「温故知新」という言葉を使って茶の湯の世界を未来に伝えていけるよう努力していますが、その際に昔に関する資料に目を通すだけではなく、先人が生きた時代に自分の心と体をできるだけ置いて考えることをこれからも繰り返していければと存じております。

淡交タイムス 3月号 巻頭言より