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今をみつめる

千 宗室

  茶道の稽古はまず割稽古から始まります。茶の湯を学ぶ人は誰でも最初に割稽古を重ね、どのような時でも基本となる自分の構えを身につけます。
  さて皆さま、点前中、目の前で扱っているものをよく見ずに、つい次の手順を追い求めていることはないでしょうか。例えば棗を清めている時に目は早々と茶杓に移っている。それは即ち心と体とがバラバラになるということ。誰でもしてしまいがちですが、どのような場でも常に「扱うものを見る」ことを心掛けてください。
  扱っているものから目を離さないというのは、「一期一会」と同じです。今日は今日という一日を見るということ。今生きている自分が置かれている場所を見ずに一時間後に行くであろう場所のことを考えるならば、私達は地に足がつかず、常に先走ったような気持ちで人生を送っていくことになります。
  何か具合が悪い時、私達は「今を見ていない」か「見るのをやめている」。もしくは「見ようとしていない」か「見たくないから見ないでいる」時です。そういう自分を戒めるための割稽古であり、自分の今の姿をしっかりと見極めていただきたいと存じます。

淡交タイムス 5月号 巻頭言より