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人工知能と人の手

千 宗室

  この一、二年、AI、人工知能に関するニュースや話題に触れる機会が大変多くなりました。
  世の中がどんどんと変化していきます。十八世紀後半から起きた第一次産業革命では、蒸気機関の発達による工業化で職を奪われた人たちが暴動を起こしました。第二次産業革命は十九世紀後半からの電気利用等による産業構造の変化、第三次は二十世紀末のコンピューターとインターネットの発達。そして第四次が二〇三〇年、AIによるものだと言われています。自ら考えて課題に対応し、必要な機械を制御できるAIが実用化されることで、これまで人が行っていた多くの職種が無くなると予測されています。
  これから先、もう人手は要らないのか。
  否、そうではありません。たとえ機械の方が上手くできるとしても「人が人の手でやって欲しいと願うもの」だけは残る、私はそう思います。
  茶の湯という文化もその一つ。お茶を点てること自体は機械にもできるかもしれません、実際、いくつかの機器が発売されています。しかし茶の湯とは、点てる人もお茶をいただく人もお互いに慮ることで成り立っています。皆さん方も茶を点てる時、それを飲む人のことを必ず考えて茶筅を振るはず。毎回同じ味にできるとは限らずとも、いつも美味しいお茶を差し上げたいと願う、そうして相手を思うその心が文化力です。季節の移ろいに一喜一憂し、日々出会う人との交流を重ね、心は磨かれます。どれだけ時代が変わっても、忘れてはいけないものは何か、皆さん方と共に考え続けていければと存じます。

淡交タイムス 5月号 巻頭言より