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稽古(けいこ)(しょう)(こん)

千 宗室

  今年も新年を寿ぐ初釜式を無事に終えることができました。
  こうした儀式に使う道具というのは大きく変わることはありません。御軸は、利休居士が御縁をいただいた正親町天皇の御宸翰を相変わらず(・・・・・)掛けさせていただきました。変わらぬ姿がめでたいと常盤木の松の和歌が詠まれています。互いが無事に今日も顔を合わせることができた、「相変わりませず」といって感謝する気持ちを、茶の湯の世界で確認する場が初釜式です。代々変わらず私も務めさせていただけることが本当に有り難いと、殊更この十年ほどは感じるようになって参りました。これからも一碗を以ってお人の縁を繋いでいけるようにと思っております。
  取り合わせとしては、変わらぬ道具に加え年に因んだもの等を少し混ぜ「温故知新」というかたちをとります。歴代では仙叟と六閑斎が戌歳ですので、例えば釜は六閑斎の箱書がある宗旦所持のたっぷりとした時代の丸釜を使いました。宗旦居士は琵琶を弾ずる方として知られていますので、皆具には楽器尽しの意匠のものを久しぶりに用いました。
  私にとって初釜式の点前座は、歴代宗匠の前での稽古始めでもあります。「稽古」という言葉、これは稽古照今、(いにしえ)(かんが)え今に照らして活かすこと。「古」とは、自分が生まれるより以前の歴史のみならず、自分の生きてきた過去、ついこの間を振り返ることもそう。稽古即ち昨日を確認することを積み重ねれば、今日の成功に繋がる鍵に気づくことができる。「稽古照今」という気持ちをもってこの道の研鑽に励んでいきたいと存じます。

淡交タイムス 2月号 巻頭言より