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花と取り合わせ

千 宗室

  ご存じのように茶事では初座の床に軸、後座に花が入れられます。
  (もろ)かざりで古い御軸が掛かっていたりすると、どちらかと言えば「花」はそれに従ったものだと考え、軽く扱いがちでしょう。取っ替え引っ替えできる、と。しかし実は、昔からよく「花を変えたら道具を三ついらう(・・・)」と言うほど取り合わせの(かなめ)となります。
  今年は十月四日が「中秋」ですが例えば月に関する軸を掛けたとして、花入に(われ)()(こう)を入れるか、同じ赤系統でも秋海棠(しゅうかいどう)を取り合わせるかで床の勢いが変わります。吾亦紅は光を吸収する色合いの朱、秋海棠は吸収した光を内から膨らませ外へ(にじ)ませている。月の白さをしみじみと感じるか、それとも月光に心洗われるように感じるのか、席中でそうした差が出るほど花の役割は大きいものです。
  人間関係にしても、ちょっと不協和音が生じたら“もうこの人との関係を疎遠にしよう、携帯電話やSNSもブロックしちゃえ”――それで終わったような気になるかもしれません。しかし良縁も悪縁も、一度結んだらそんな簡単に切れるものではありません。花を変えれば道具三つを動かす必要があるのと同様、本気でその縁を変えようと思ったら、その対象とする人間だけを動かすのではなく、関わりの多い少ないに関係なく繋がった人々全てを切り替えなければならぬほど大きな話になります。
  軸と花。自分が席主でなくとも取り合わせを目にした際、「もしこの花をあれに変えたらどんな印象になるだろう」等、考えるトレーニングをすることは感性を鍛える機会になります。日頃からぜひ意識してみていただきたいと存じます。

淡交タイムス 10月号 巻頭言より