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つながり

千 宗室

  三年前から始まった今日庵全域の茶室の修復事業は現在も続いておりますが、その一環として行われた総門「兜門」の修復工事は昨秋完了しました。一方、京都市による小川通りの無電柱化事業も一区切り。電力線の埋設など年単位の長い工事期間を経て、十一月末にはわずか二日程であっという間に電線・電柱が撤去されました。私はたまたま出張から帰った日で辺りが急に明るく広く、「四百年前はこんな具合に空が見えていたのだろうか」と、そんなことを感じながら手際の鮮やかさに驚きました。舗装復旧工事は今しばらく続くようです。そうした状況のなか今年の今日庵稽古始めの際には、屋根の檜皮が新しく葺き替えられた兜門を来庵者にくぐっていただけました。
  兜門の扉は、夜間には閉ざしますが日中は開けてあります。この門から入って真っ直ぐ露地を抜け、大玄関から奥に進んだ所が御祖堂。等身大の利休像が祀られています。普段は中まで入っていただくことはできませんが、茶の道を志す人には誰でも門前に立つことで利休堂に向かい合っていただければとの思いから門扉を開いています。
  御像の利休居士は草鞋を履いておられます。夏の暑い時も冬の寒い時も草鞋履きというのは雲水の姿と捉えられます。手には杖を持ち、「いつでも心を前に向けていく」留まらぬ姿を表しているのではと思っています。やみくもに前進するわけではなく、もし間違いに気づいたらくるりと回ってもと来た道を進めばいい。時に方向を変えつつも後ずさることなく、前向きに進んでいる姿勢。私共が現在行っている点前作法は、いろいろな時代の流れのなかでその場に応じ姿を変えてきているものもありますが、そのもとは利休居士につながっています。皆さまには一点前一点前茶の湯の歴史に関わっていくということを再認識しながら、常に自分の心を前に向けていけるような覚悟を持った茶の湯者であっていただきたいと願います。

淡交タイムス 3月号 巻頭言より